カテゴリ
タグ
まち(33)
museum(25) アート(25) スペイン(25) 歴史(20) 食(14) チュニジア(13) 読書(12) 映画(12) トルコ(11) イタリア(11) モロッコ(10) 宗教(10) ポルトガル(10) 音楽(7) 京都(6) 沖縄(6) 台湾(5) café(5) 韓国(4) 以前の記事
2009年 02月 2009年 01月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 01月 2007年 11月 2007年 10月 more... 最新のトラックバック
ライフログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
海を挟んで、アフリカ大陸の北端と向かい合うアルヘシラスの町へ。そこからバスで小1時間ほどでラ・リネアという所に着くが、バスターミナルからイギリス領ジブラルタルへは歩いて10分ほどだ。この辺りは英西の中立地帯で、ターリクという、海に突き出た特徴的な形の山を前方に見ながら道路を渡ると、車と歩行者とに分かれてパスポートコントロールがある。私のパスポートの刻印を見て淡々と、遠くから来たんだねえと言う係員。
国境から続く一本道 "Winston Churchill Road" を進むと、前方に車も人も行列が出来ている。道路と垂直に交差している滑走路から、今しもブリティッシュ・エアウェイズの飛行機が離陸しようとしているところだったのだ。踏切の前で待つ人の中には見送りの人もいて、飛び立とうとする飛行機に向かって大きく腕を広げ手を振っていた。週末に本国から家族か友人が訪問や里帰りに来たのだろうか。やがて踏切が開き、列はぞろぞろと前進。ひたすら、チャーチル・ロードを歩いて行く。あちこちに誰かれの銅像やら年号と事蹟を記したモニュメントやらが建っている。いちいち英国のこの地での確かな足跡を強調しようとしていることは明らか。それらを見るたびに気分がなえてくる。 "City Center→" の表示に従って細道を入る。と、そこは城塞の入口で、古びた跳ね橋がかかっている。今やその内と外に何の隔たりもないけれど、そこがこの地の防御の拠点だったことをうかがわせる。橋を渡りトンネルをくぐると、明るい大きな広場に出た。ターリク山が見下ろし、カフェやファーストフード店が取り囲む広場では、家族連れがのんびり憩い、子どもたちが走り回っている。 この広場を基点にして伸びているメイン・ロードを歩く。日曜日のため、いくつかのカフェ以外はほぼ閉まっていて、人通りの大半が観光客のようだ。通りには、ヘブライ語の看板とイスラエルの旗を掲げている店も目立つ。メイン・ロードと平行してアイリッシュ・タウンと名付けられた通りがあった。そこはいっそう人通りが少なく、メイン・ロードより町並は古く薄暗い。パブがあって、表の黒っぽいガラス越しに中を覗いてみると、客がいて営業中だった。しかし、メニューを出してるわけでもなく、わざと人目に付かないようにしてるとしか思えない。いちげんさん(観光客)は相手にしないような雰囲気。通りを一本違えただけの場所に、少し空気の違うアイリッシュのコミュニティが築かれている様子。 それだけでなく、ジュラバというモロッコ独特の服を着た老人も歩いているし、広場で遊ぶ子どもたちの中では、英語、スペイン語、アラビア語が飛び交っている(おそらくヘブライ語も)。ただ、イギリス人ぽい子どもはイギリス人ぽい子どもたちでグループになっているし、アラブ系の子どもはアラブ系の子ども同士遊んでいる。あたりまえなのかもしれないが、子どもでもやっぱり言語ごとにコミュニティがある。 ケーブルカーが休業中で山に登ることもできない。昼食のためにメイン・ロードのカフェの一つに入る。店内のTVではイングランドのサッカー中継が流れている。"Steak&Kidney Pie"(ポテト付き)というのを注文、世界的に有名なイギリス料理のまずさを堪能した。 ここで断っておくと、基本的に私は何かを食べて「まずい」と言うことはない。ふつう飲食可能なものを口にした場合の判断は「おいしい」か「おいしくない」かどっちかで、その他(キュウリとか虫のたぐいとか)は私の口に合わない/生理的に受け付けないから、その判断の基準外。だから、他人が「あれはまずい、これはまずかった」とたびたび言うのは、じつは理解できないのだ。 とにかく、私もこれは「まずい」と言うしかなかった。まあ、パイの味については納得の上のこととしましょう。問題は付け合わせ、ポテト・キャベツ・にんじん・グリンピース。どうしたらここまでげんなりした茹で方ができるのか教えてほしい。パイのソースをからめてみたが、ソース自体すでに絶望的でムダだった。さらに塩をかけてみたがもう、手の施しようがなかった。 入った店が特別だったのかもしれないが、そもそもこんなに身近にあるスペイン料理に、ここの食がその影響を受けていないのが不思議だ。実際、スペイン料理の店もあるのに。英国領とはいっても、ここの穏やかな気候と風土のせいか人々の生活はのんびりしているようだし、その点はラテン的に出来ているように見えるけれど。 スペインはジブラルタルの返還を求めており、一度は共同統治の方向に進みかけたものの、住民投票で拒否されたということだ。イギリスにとっては軍事的にぜひとも押さえておきたい要所だろうが、それ以外なんら発展的要素があるとは思えない。ただこのヨーロッパの南端で、かつて栄華をきわめた大英帝国の存在を誇示しておきたいという気持ちは伝わってくる。住民にしても、英国人の誇りを頼りにしてこの飛び地で暮らしているのではないか。 国境に面したスペイン側の道路沿いに、一つの銅像があった。自転車を引いた男がジブラルタルを見つめて立っている像で、台座に「ジブラルタルのために働くすべてのスペイン人労働者に捧げる」のようなことが記されていた。前方の英国領土を見つめるまなざしがうらめしそうに見えるが、その海の向こう側、モロッコの一部には、セウタとメリリャというスペインの領土があって、モロッコの返還要求を拒み続けている。どっちもどっちじゃないか。
by achici
| 2006-04-19 22:49
| 旅
|
ファン申請 |
||