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2/3 Ronda 曇りときどき雨 朝、しとしとと雨が降っていた。この旅で初めての雨。ホテルは朝食付きで、声が異様にカラ元気な男が淹れてくれるカフェ・コン・レチェが、意外とおいしいカプチーノだ。天気が少しでも良くなってくれることを願って部屋で待つ。 昼まえ、とりあえずインターネット屋を探しに出る。ここ数日誰からもメールは来ておらず、私からもとくに書いていない。私以外は普通の、現実の生活を送ってるのだろうし、私も伝えなければいけないニュースがあるわけでもなく、所在地報告するのみ。 闘牛場脇の公園で、この町の断崖からふもとに広がる濃い緑の平原を眺望していたら、犬を散歩させている老人が話しかけてきた。寒いねえ、どこから来たの、などスペイン語で言っているので、言葉はわからないながら何度も聞き返したりして少し会話していたが、結局は半日はこの人と一緒にいることになり困惑した。 ここロンダは、二つの崖の上にある町が橋でつながれて出来ている奇妙な町なのだが、その橋を下から見る場所に案内してくれるというのでついて行った。彼の忠実で陽気な愛犬は、黒い縮れ毛をした小さな犬で、道中、ちょこまかちょこまか歩き回り、橋の欄干に身を乗り出しては谷底を眺めたり、よその家に勝手に入っていったりしている。 その後、私は闘牛場の中を見に行くと言うと老人は、いったん犬を家に置いて5分で戻るから闘牛場の前で待っていろと言う。その間、私は1時間以上も闘牛場を見学していたのにもかかわらず、出てきたらまだいた。彼をまこうとして長居した訳ではなく(さすがにもう待ってないだろうと期待はしたけど)それだけじっくり見る価値があったからだ。 ロンダは近代闘牛発祥の地だそうだ。闘牛は見たことがないけれど、誰もいない闘牛場の砂の上に、対面する闘牛士と怒り狂った牛との闘いと、それを包む観客の熱狂を想像してみることはできる。円形のアリーナを囲む柵はこの国の色、少し沈んだ色の赤と黄色に塗られ、観客席に立つ柱には優雅な浮彫が刻まれている。奥に牛を入れておく場所があり、ブルペンと書いてある。野球でよく聞くこの言葉、ここから来たのか。牛はおらず、裏の囲いの中に代わりに馬がいて、乗馬の練習中だった。伝統的な馬術学校があるらしい。そう言えば、ホテルの隣にも馬具屋があったなあ。 ゴヤのエッチングも展示されていた。説明によれば、ゴヤがそれらの絵を描いたのは、スペイン独立戦争後の不遇の時代。何もかも失った中で、若い頃の記憶を頼りにして描いたのだという。ロンダで名声を高めていた闘牛士ペドロ・ロメロとそのライバルの試合の様子が残されている。闘牛士のコスチュームの変遷も面白い。昔は牛角から身を守るためにバックスキンで作られていたのが、時代が下るにつれ、刺繍が施されたり縁飾りをつけたり、生地がベルベットやシルクになったり、エレガントさと華麗さを追求するものに変わってゆく。ほんとうは人と牛との血生臭い戦いの場であるのに、そこでも視覚的な様式美を完成しようとする人間。とはいっても、実際に見たわけではなくその興奮や熱狂は未知のものだけど。 またその老人に会ったところで観念して、一緒に昼食をとることに。昔はフランスで働いていたとかで、今は犬とふたり暮らしらしい。歳は58と言っていたが、いくら西洋人が老けて見えるとはいえ度が過ぎている。どう見ても10歳はサバを読んでいるだろう。明日はどうするのかと訊くので、アルヘシラスに行ってそこからモロッコに渡るのだと答えると、じいさん少し考えて、アルヘシラスには知り合いがいるから、わしも一緒に行こうと言い出すではないか。いえいえ、私一人で行きますから!と言うと、なぜ!?一人より二人の方が楽しいじゃないか、せっかく出会ったのに!と。そんな問答を繰り返して埒が明かなくなり、なんとか理由をつけてホテルに帰ることにした。それでも追いかけてくるのをなんとか振り払って戻ってきた次第。結局は昼食をごちそうになった末、逃げたという顛末なんだけれど、…まいりました。 夕方、恐る恐るもう一度散策に出てみたが、彼には会わなくてほっとした。公園に夕日を見に行ったけれど、厚く暗い雲の合間からかろうじてオレンジ色の影が照っている程度、うっすらとした広がらない寒々しい夕映え。残念。
by achici
| 2006-04-19 00:12
| 旅
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