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バルセロナから列車で地中海岸沿いに南下、バレンシアに向かう。車窓からは、左手に海が朝日を受けてきらきらしているのが眺められ、きもちがよい。右手には畑が広がる。 青々としたのはおそらく稲を栽培しているのだろう。バレンシアは米の産地で、パエリャの本場だ。もう一つ有名なのがオレンジで、町の広場の真ん中に、たわわにオレンジの実をつけた木があるのを見て、まさしくスペイン!という感じがした。 スペインは食事の時間帯が日本に比べるとずいぶん遅い。食事にかける時間も長いけれど、昼食をとり始めるのは午後2時ぐらいが普通で、そこから2時間ぐらいかけて、ゆっくりたっぷり食べている人が多いようだ。夕食は、午後8時にレストランやバルに行っても、まだ誰も食事している客がいないことが多い。 それにシエスタがある。バレンシアに来て、初めてシエスタのおかげで宙ぶらりんにさせられた感じがする。最近は都会ではシエスタをなくしていく傾向にあるそうで、だからそれまでいたバルセロナでは、昼間も変わらず営業しているところが多くて、シエスタを実感することはなかったのだ。 そんなせいで、バレンシアに泊まった日は、町の生活リズムと自分の行動のタイミングが合わない日だった。 バレンシアに到着したのはお昼どきだったが、まだどのレストランも開いておらず、それ以外の店も教会や博物館も、ほぼ閉まっている。開いているバルやカフェも客がまばらで静かだし、人もあまり歩いていない。見かけの明るさによらずこの町はなんておとなしいのだろうかと思った。空腹を抱えながら、カテドラルの近くを、レストランの前に貼り出されたメニューリストを眺めながら歩く。パエリャを食べるつもりだったけど、どの店も「2人前から」だったので断念。こういうとき、一人旅だと不便に思う。 昼食後、カテドラルへ。正面の広場には色とりどりの花が植えられていて南欧の明るい雰囲気たっぷりだ。ゴシック様式の教会の中に入る。上方にある窓から柔らかい光が射し込んでいるが、ガラス窓ではなく、アラバスターらしき透き通った石がはめ込まれている。それでも教会内はじゅうぶんに明るいから、よほど日差しが強いのだと思う。教会の外を一周してみると、建物は複雑な形をしていてあとの時代に増築された様子がなんとなくわかる。 また、円形の屋根には深い青色の瓦が葺かれているのが独特だ。ここだけでなく、バレンシアの町の建物にこの種の瓦屋根が見られる。バレンシア近郊では昔から製陶が盛んらしい。 で、その陶器を見に、国立陶器博物館(Museo Nacional de Cerámica y de las Artes Suntuarias "González Martí")へ。行ってみると午後4時までお休み。開館時間まで、私も館の前で半時間ぐらいぼけっと一休み。 国立陶器博物館では、もと侯爵邸だった歴史ある建物に、スペインだけでなく世界中の陶器のコレクションが展示されている。中国陶磁器だけ集めて特別展示も行われていた。また、陶器コレクションだけでなく、18〜19世紀のバロック・ロココの装飾品や調度品も数多く見ることができる。 陶器の展示では、西洋の陶器について、古代から時代を追って製法なども詳しく説明している。ギリシャ、ローマの時代から、イスラムから多大な影響を受け、スペインがキリスト教徒の国になった後から現代までの変遷をたどる。スペインでは、この近くのマニセス、パテルナ、アルコラ、この三つの窯が有名らしい。 手法のことまでよくわからないが、絵柄だけにかんして言うと、イスラム陶器から受け継いだ精緻なアラベスク文様や草花の染付に、人間や動物の具象的な絵が加わっていく様子がわかる。面白いのは、絵皿が少しも精巧な絵付けをめざしてるように見えないことだ。子どもが描いたような牛、鳥、女性の絵。あまりに筆が自由に走っている絵に笑ってしまいそうになる。「中国陶磁を模写して唐人を描いてみたが顔が歪んで失敗しました」というようなのもある。このヘタヘタ絵皿の中でも19世紀バレンシアで作られたものが、絵の下手さ具合に開き直りが入っていて最高。 博物館をじっくり見たあと、日の暮れかかる町を地図を見ずに闇雲に歩いた。人通りもようやく増えてきた。買い物袋を提げた奥さんたちや、仕事がひけたのであろうおじさんたちが行き交う通りを行くと、大きな市場があり近くに昔ながらの商店街に出た。カゴだけ売る店や、木工品屋や古本屋、下着屋など、間口の狭い店が通りの両側に並んでいる。 途中、中心に泉のある小さな円形の広場があって、360度ぐるりと手芸用品や小間物なんかの店舗が取り囲んでいる。どの店にも100年前からずっとここに座ってますという感じのおばあさんたちがいる。 今度はメインのショッピングストリートの方へ。すると、そこは昼間の静けさが嘘のような賑わいで、オレンジ色の街灯の下、若い人からお年寄りまでが歩行者天国の通りを連れ立ってわいわい歩いている。これだけの人、一体どこから湧いてきたのだろう。バーゲンシーズンの折から、デパート "エル・コルテ・イングレス" の赤い袋を提げている人が多い。 夜になってやっと活動的になった町だが、その時間には足も疲れていた私。おとなしくペンションに戻った。スペイン人にしては英語の流暢なペンションの主人、1泊しかしない私に、もっといればいいのにと何度も言う。 たしかに、夕方以降の活気ある様子をみて、もう1泊してもっといろいろ見てみたい気もした。パエリャも食べてないし。実際、地図で確認すると、私の歩いた所は町のごく一部だった。どうせ綿密な計画など持たない旅だから、いくらでも変更できるのだけど、一方でなんとなく早くマドリッドを過ぎてしまいたかった。 結局、翌朝また列車に乗り、次の目的地マドリッドに向け出発。3月にある火祭りも面白そうだし、バレンシアにはいつかまた戻ってこよう。
by achici
| 2006-04-10 00:35
| 旅
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