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グラナダ滞在3日目、あまりに単調な気分がやりきれなかったので、フラメンコを見に行くことにした。ペンションから申し込め、送迎付きなので楽ちんだし、夜遅くても安心だ。その夜のツアーは参加者計7名。その中にアルゼンチンから来た三姉妹と母親がいた。そのお母さん、真っ赤なショールに長い黒髪、ばっちり化粧で貫禄十分、はじめ店の人かダンサーの一人かと思った。
フラメンコを見る前に夜のアルバイシン(アルハンブラと向かい合う古い町並)を散策。若い女性ガイドが、スペイン語と英語(棒読み)で説明しながら、白壁の低い屋根の家が並ぶ、アルバイシンでももっとも古い地区を案内してくれる。 向かい合う家はそれぞれ、ドアや窓が正面に来ないよう互い違いに造られている。そうやって住民同士のプライバシーを守っていたのだって。また、ハマムのあった一画の勾配のある道は、石畳の真ん中に溝が走っている。その溝をハマムから出る水が流れていたというのが面白い。 街灯が照らし出す町並みを抜けると、アルハンブラを正面に見渡す展望台に出た。ライトアップされて浮かび上がる夜の宮殿、幻想的でめちゃめちゃ綺麗だった。カメラ持って来なかったのを悔やんだ。 午後11時になりタブラオに移動。ちょうど前の回が終わったところで、舞台を退けたばかりの汗だくのダンサーが、小学生ぐらいの男の子と話をしている。子どもは彼女の息子のようだった。始まる前から妙に生活感を感じてしまった。 いよいよショーが始まる。舞台上に8人、観客7人。私たち観客、数の上では負けていたが、こっちにはアルゼンチンのお母さんがいる。彼女は勢いでそのままステージに上がって行ってしまうんではないかと思うくらい、パフォーマーと一緒になって手拍子とかけ声を送っていた。 恰幅のいい男性歌手がゆるーく歌い、二人の脱力系ギター奏者の演奏に合わせて、4人の女性ダンサー、1人の男性ダンサーが踊る。とにかく、その4人の女性ダンサーの踊りに圧倒された。年齢順に若い人からソロで踊っていくが、彼女たちのそれぞれの踊りに、女性が歳を経るにつれてたどる変化が表現されているようで興味深かった。 若さがそのまま美しさである世代から、成熟を増すとともに体のボリュームも増して、女のにおいみたいなものが強く発せられていく。いくつもの苦悩の滲み出る時期を越えて、酸いも甘いも噛み分けた最後はもう、ある意味、女の悟りがすぐそこまで来ているような強さに達する。トリをとったいちばん年配の踊り手は、体つきも表情もひときわギュッと引き締まっており、揺るぎない所作でパッションを放散する、強烈な存在感だった。音・リズム・グルーブ、それらをぐんぐんに小柄な体にためて全身で感情込めて吐き出してゆく。 彼らの手拍子はそのまま楽器だった。ギターと声と掌を叩く音にダンサーの体は響応して、彼らみんなが音楽になっていて、とにかく素直に感動。 タブラオのあった一帯の丘はサクロモンテといって、そこには洞窟住居の跡がある。洞窟住居じたいはかなり古くからこの地(イタリアにもあるね)で見られるようだが、キリスト教徒によるグラナダ奪回後、イスラム教徒やユダヤ教徒が家を追われてこのサクロモンテに逃げ込み、住居を形成した。その後、ジプシー(ロマ)たちが住み着き、わりと最近までそこで生活が営まれていたらしい。一部は現在、博物館(サクロモンテ解説センター、Centro de Interpretación del Sacromonte)になっていて、彼らがどのような生活を送っていたかが再現されている。 フラメンコに代表されるアンダルシアの音楽や舞踊は、こうした場所で民衆の生活文化の中で育まれて出来たもので、そこにはいくつもの民族の文化が混じり合っている。インドが源流とされるジプシーが、西へと移動する道すがら運んできた各地の文化や、イスラム教徒が運んできたアラブ的・アジア的要素、ユダヤ、現地イベリア由来のもの等々、それはそのままアンダルシアの多民族ミクスチャーの歴史を象徴するかのようだ。 そういう、さまざまな要素を含む文化だからこそ、どんな人々の心にも共鳴する音色を持っている。アンダルシアにかぎらず世界中で、民衆は、生活を彩るものとして音楽や舞踊を愛してきたし、長い歴史の中でときには自民族だけでなく、他の民族のものも取り入れながら発展を繰り返してきた。そうやって出来た民族文化に触れたときには、遠く離れた場所の文化で育った私たちでも、意識の下に眠っている歴史の記憶の部分がくすぐられるのにちがいないと思う。 フラメンコのことなんて何も知らないまま目にした舞台だったけど、かなり楽しめたし見に来て良かった。これでなんとか、上向き調子で次の町へ足を進められそうな気分になった。
by achici
| 2006-04-18 03:36
| 旅
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